変わりつつある島、田代島 ◆◆

さらに奥へと入っていくと…

 

 緩やかな坂道をしばらく下ると、矢庭に視界が開けました。そこは盆地で、目を疑う広大なすすき野でした。ここ田代島では驚くほどの平地です。以前は一面田圃だったそうですが、いまはまったく人の手は入っていません。さらに少し行ったところで、怪しげに傾いている立て札を見つけました。『満蔵寺跡』。むかし海賊に襲われて、住職ほか3人が殺され、寺も焼き払われたと書いてあります。辺りの寂しさと木陰のひんやりとした風を感じた私は、そそくさと立ち去ることにしました。

 しばらくして、三石観音への入口を見つけました。けもの道を奥へ進み、行く手を遮る倒木をくぐり抜けると、石の鳥居があり、その先にお堂が見えてきます。三石観音と言っても観音様はどこにも見あたりません。調べてみると、海から上がって島の大漁を守る観音様が住むためにお堂が立てられたとありました。なるほど、この中で観音様が暮らしているのかと、そっとしておいてあげることにしました。海際に出てみるとそこは断崖で、下の岩場では荒波が打ち寄せ潮を噴き上げています。ここからの景観はとても素晴らしいものでした。


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